2008年02月18日

防火区画

===========法庫より抜粋===========

(防火区画)
第112条 主要構造部を耐火構造とした建築物又は法第2条第9号の3イ若しくはロのいずれかに該当する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の2分の1に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が1500平方メートルを超えるものは、床面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の2分の1に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)の合計1500平方メートル以内ごとに第115条の2の2第1項第1号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第109条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ない場合においては、この限りでない。

 1.劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客席、体育館、工場その他これらに類する用途に供する建築物の部分

 2.階段室の部分又は昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)で第115条の2の2第1項第1号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたもの

2 法第27条第2項、法第62条第1項又は法第67条の2第1項の規定により準耐火建築物とした建築物(第109条の3第2号又は第115条の2の2第1項第1号に掲げる基準に適合するものを除く。)で延べ面積が500平方メートルを超えるものについては、前項の規定にかかわらず、床面積の合計500平方メートル以内ごとに同号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画し、かつ、防火上主要な間仕切壁を準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

3 法第21条第1項ただし書の規定により第129条の2の3第1項第1号ロに掲げる基準に適合する建築物とした建築物、法第27条第1項ただし書の規定により第115条の2の2第1項第1号に掲げる基準に適合する建築物とした建築物又は法第27条第2項、法第62条第1項若しくは法第67条の2第1項の規定により第109条の3第2号若しくは第115条の2の2第1項第1号に掲げる基準に適合する準耐火建築物とした建築物で、延べ面積が千平方メートルを超えるものについては、第1項の規定にかかわらず、床面積の合計千平方メートル以内ごとに同号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。

4 前2項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分で、天井(天井のない場合においては、屋根。第6項、第7項及び第9項において同じ。)及び壁の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたものについては、適用しない。

 1.体育館、工場その他これらに類する用途に供する建築物の部分
 2.第1項第2号に掲げる建築物の部分

5 建築物の11階以上の部分で、各階の床面積の合計が100平方メートルを超えるものは、第1項の規定にかかわらず、床面積の合計100平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第9号の2ロに規定する防火設備で区画しなければならない。

6 前項の建築物の部分で、当該部分の壁(床面からの高さが1.2メートル以下の部分を除く。次項において同じ。)及び天井の室内に面する部外(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。次項において同じ。)の仕上げを準不燃材料でし、かつ、その下地を準不燃材料で造つたものは、特定防火設備以外の法第2条第9号の2ロに規定する防火設備で区画する場合を除き、前項の規定にかかわらず、床面積の合計200平方メートル以内ごとに区画すれば足りる。

7 第5項の建築物の部分で、当該部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造つたものは、特定防火設備以外の法第2条第9号の2ロに規定する防火設備で区画する場合を除き、同項の規定にかかわらず、床面積の合計500平方メートル以内ごとに区画すれば足りる。

8 前3項の規定は、階段室の部分若しくは昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)、廊下その他避難の用に供する部分又は床面積の合計が200平方メートル以内の共同住宅の住戸で、耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第5項の規定により区画すべき建築物にあつては、法第2条第9号の2ロに規定する防火設備)で区画されたものについては、適用しない。

9 主要構造部を準耐火構造とし、かつ、地階又は3階以上の階に居室を有する建築物の住戸の部分(住戸の階数が2以上であるものに限る。)、吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる公衆便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)については、当該部分(当該部分が第1項ただし書に規定する用途に供する建築物の部分でその壁(床面からの高さが1.2メートル以下の部分を除く。)及び天井の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。以下この項において同じ。)の仕上げを準不燃材料でし、かつ、その下地を準不燃材料で造つたものであつてその用途上区画することができない場合にあつては、当該建築物の部分)とその他の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。)とを準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第9号の2ロに規定する防火設備で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分については、この限りでない。

 1.避難階からその直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きとなつている部分、階段の部分その他これらに類する部分でその壁及び天井の室内に而する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造つたもの

 2.階数が3以下で延べ面積が200平方メートル以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200平方メートル以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分

10 第1項から第4項までの規定による第115条の2の2第1項第1号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁(第2項に規定する防火上主要な間仕切壁を除く。)若しくは特定防火設備、第5項の規定による耐火構造の床若しくは壁若しくは法第2条第9号の2ロに規定する防火設備又は前項の規定による準耐火構造の床若しくは壁若しくは法第2条第9号の2ロに規定する防火設備に接する外壁については、当該外壁のうちこれらに接する部分を含み幅90センチメートル以上の部分を準耐火構造としなければならない。ただし、外壁面から50センチメートル以上突出した準耐火構造のひさし、床、そで壁その他これらに類するもので防火上有効に遮られている場合においては、この限りでない。

11 前項の規定によつて準耐火構造としなければならない部分に開口部がある場合においては、その開口部に法第2条第9号の2ロに規定する防火設備を設けなければならない。

12 建築物の一部が法第24条各号のいずれかに該当する場合においては、その部分とその他の部分とを準耐火構造とした壁又は法第2条第9号の2ロに規定する防火設備で区画しなければならない。

13 建築物の一部が法第27条第1項各号のいずれか又は同条第2項各号のいずれかに該当する場合においては、その部分とその他の部分とを第115条の2の2第1項第1号に掲げる基準に適合する準耐火構造とした床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。

14 第1項から第5項まで、第8項又は前項の規定による区画に用いる特定防火設備及び第5項、第8項、第9項又は第12項の規定による区画に用いる法第2条第9号の2ロに規定する防火設備は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める構造のものとしなければならない。

 1.第1項本文、第2項若しくは第3項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第5項の規定による区画に用いる法第2条第9号の2ロに規定する防火設備次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの
  イ 常時閉鎖若しくは作動をした状態にあるか、又は随時閉鎖若しくは作動をできるものであること。
  ロ 閉鎖又は作動をするに際して、当該特定防火設備又は防火設備の周囲の人の安全を確保することができるものであること。
  ハ 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の通行の用に供する部分に設けるものにあつては、閉鎖又は作動をした状態において避難上支障がないものであること。
  ニ 常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあつては、火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合のいずれかの場合に、自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

2.第1項第2号、第4項、第8項若しくは前項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第8項、第9項若しくは第12項の規定による区画に用いる法第2条第9号の2ロに規定する防火設備次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの
  イ 前号イからハまでに掲げる要件を満たしているものであること。
  ロ 避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、かつ、常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあつては、火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

15 給水管、配電管その他の管が第1項から第4項まで若しくは第13項の規定による第115条の2の2第1項第1号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁、第5項若しくは第8項の規定による耐火構造の床若しくは壁、第9項本文、第10項本文若しくは第12項の規定による準耐火構造の床若しくは壁又は第10項ただし書の場合における同項ただし書のひさし、床、そで壁その他これらに類するもの(以下この項及び次項において「準耐火構造の防火区画」という。)を貫通する場合においては、当該管と準耐火構造の防火区画とのすき間をモルタルその他の不燃材料で埋めなければならない。

16 換気、暖房又は冷房の設備の風道が準耐火構造の防火区画を貫通する場合(国土交通大臣が防火上支障がないと認めて指定する場合を除く。)においては、当該風道の準耐火構造の防火区画を貫通する部分又はこれに近接する部分に特定防火設備(法第2条第9号の2ロに規定する防火設備によって区画すべき準耐火構造の防火区画を貫通する場合にあつては、法第2条第9号の2ロに規定する防火設備)であつて、次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを国土交通大臣が定める方法により設けなければならない。
 1.火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖するものであること。
 2.閉鎖した場合に防火上支障のない遮煙性能を有するものであること
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2008年02月15日

構造耐力上主要な部分

建築基準法施行令第1条第3号に規定されている、建築物の部分のこと。
建築物の荷重を支え、外力に対抗するような建築物の基本的な部分のことである。


正確な定義は次のとおりである。」(建築基準法施行令第1条第3号)
基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、
斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう)、
床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう)



建築物の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動

若しくは衝撃を支えるもの

をいう。

よく似た用語として
建築基準法第2条第5号では「主要構造部」という用語を定義している。
この「主要構造部」とは「壁・柱・床・はり・屋根・階段」のことである。
ただし、構造上重要でない最下階の床、間仕切り用の壁、間柱、つけ柱、局所的な小階段などは「主要構造部」から除外されている。

具体的には次の部分が「構造耐力上主要な部分」に該当する。
1)在来工法の木造住宅の場合
   基礎に関するものとして「基礎」「基礎ぐい」、
   軸組に関するものとして「土台」「壁」「柱」「斜材(筋かいなど)」「横架材」「床版」、
   屋根に関するものとして「小屋組」「屋根版」が、「構造耐力上主要な部分」に該当する。

2)鉄筋コンクリート造の場合
  「基礎」「基礎ぐい」「壁」「床版」「屋根版」が「構造耐力上主要な部分」に該当する。

このような「構造耐力上主要な部分」については、
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)で
新築住宅に関する10年間の瑕疵担保責任が義務付けられている。
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2008年02月06日

「戦い」を支えたのは一級建築士としての誇り(抜粋)

九州企業特報より抜粋
http://www.data-max.co.jp/2008/02/6_7.html

「戦い」を支えたのは一級建築士としての誇り

建物は「人」が造り「人」が住む | 建設業界への提言
[特別取材]

[プロフィール]
仲盛 昭二 (なかもり しょうじ)                    
協同組合 建築構造調査機構 一級建築士事務所
参事(技術担当)
1951年2月8日、福岡市博多区生まれ。
九州産業大学卒業後、日本建設(株)に入社。
1978年、独立し、昭和設計事務所を創業。
1980年2月、設計工房サムシング(株)を設立し、同社代表取締役に就任。
2002年9月、サムシング廃業。
その後の現在に至るまでの詳細は、本文にて紹介。


 建設業界への提言として、2005年11月に起こった姉歯秀次被告による構造計算書偽装問題の余波を受け、「第2の姉歯」と揶揄されて2年間もの裁判を余儀なくされ、現在もなお孤軍奮闘している仲盛昭二氏(元(株)サムシング代表)の生き様とその思いを伝えていきたい。本題に入る前に、当シリーズの意義を説明しておく必要があるだろう。

 現在、日本の建設業界はさまざまな問題を抱えている。とくに、業界に最も悪影響を与えた問題としてよく挙げられるのが「改正建築基準法」。この法改正は、何も確認申請が遅れて建物が造れないという問題だけではない。それにより、業界の景気が悪化しているのはもちろんだが、さらに深刻なのは、建築の担い手(施工に携わる職人や構造設計士などの技術者も含めて)の数が減っているということである。

 建物を造るのは「人」である。その「人」が業界に魅力を感じなくなったり、もしくは不透明な先行きに不安を感じて業界を離れたりすれば、残った人への過重な負担や若手への技術伝承の断絶によって、全体的に製品の質が落ちてくるのは自明の理である。

 そうなれば、なおさらそのリスクを「住民」が背負うことになるのである。つまり、「住民」のための法改正が、結果的にはリスクを「住民」に押し付けることになってしまうのだ。

 そもそも、なぜこのような状況になったのか。それは周知の通り、姉歯秀次・元一級建築士による構造計算書偽装問題が発端となっている。この問題は当時、建設業界・建築行政のさまざまな問題を浮き彫りにした。これ自体は大きな罪であるし、このような事態を引き起こす温床が業界・行政双方にあったのも事実であろう。

 そして、ここで国交省や福岡市がとった措置によって、仲盛氏が「第2の姉歯」というレッテルを貼られてしまうのである。

 我々は、この「第2の姉歯」と言われた仲盛氏の生き様を描くことで、孤軍奮闘する氏へのささやかな支えになればという気持ちもあるが、むしろ、今の日本の建築行政が抱える問題を、姉歯事件とは異なる視点から浮き彫りにし、「住民の安全」とは何か、ということを改めて問い直すことが主たる目的である。

 それは仲盛氏も望むことで、「私のことはともかく、早くこの問題を片付けて、住民の方たちを安心させてあげたい。また、今の行政はいろいろな問題を抱えている。それを皆の力を合わせて少しでも良くしていきたい」と、その率直な気持ちを語った。
                          2008年01月30日 10:07 更新



 仲盛氏は1951年2月8日に生まれた(実はこの誕生日が、仲盛氏にとって一生忘れられない日と重なるのだが、それは後述する)。九州産業大学卒業後、日本建設(株)に入社。78年(27歳)で独立し、昭和設計事務所を創業。80年2月(29歳)に設計工房サムシング(株)を設立し、同社代表取締役に就任した。

 構造設計を生業としたきっかけは、「自分はデザインには向いていなかった。だから、何の迷いも無く構造設計を選んだ」からで、独立した動機は「設計事務所として大成したい、人に使われたくない」という思いが強かったからだという。

 もちろん、はじめは仕事がなく、非常に苦労していたようだ。氏が言うには、1件1件、設計事務所やゼネコンに対して営業してまわることに対し、恐怖を感じるようになっていたという。
 
 しかし、昭和60年代には建築物が急激に増えたこともあって、同社は下請ながら急速にその業容を拡大していった。そのきっかけは、構造計算・図面作成・営業をそれぞれ分業制にしたことだった。

 40歳(91年)で春日市に引っ越したときの社員は、約30名だった。当時はバブル期と重なっており、仕事が無条件に入ってきていた。それを捌くために増員を優先した結果、45歳(96年)頃になると、社員も55名に増え、最高で60名を抱えるようになっていた。これだけ人員を抱えている設計事務所は、全国的にも珍しかったそうだ。

 こうして同社は、構造設計の分野では福岡地区でシェア70%を確保することに成功した。だが氏は、ある過ちを犯したことがきっかけで経営が傾き、経営を続ける気力を失ってしまい、ついに2002年9月の廃業に至ったと回顧する。

 その原因のひとつは、いろいろな商売に手を出したこと。とくに当時は、不動産物件を10件以上も購入していた。「不動産は、大手マンション会社から強制的に現金で買わされていた。その見返りに仕事をやるという、甘い誘いにのって。私は、仕事のためのお付き合いと思って買っていたが、結局仕事はもらえなかった。従業員が増えすぎて、仕事をとるのに躍起になっていた」と氏は反省する。

 もうひとつは、どんぶり勘定による資金繰りの悪化。「不渡り手形をつかまされたり、安易に手形に頼りすぎたりした。民事再生法が施行された直後で、それで助かったとは言え、これは大罪だ。罪悪感は強く残っている」と悔やむ。

 「これからは仕事をすることで償っていきたい。自分の知識や経験、そしてノウハウを後世に残していきたい」と、別の設計事務所で雇われるかたちで仕事を続けていた仲盛氏。そこに突然、あの姉歯事件が起き、「第2の姉歯」として槍玉にあげられ、2年間の戦いの日々を送ることになったのである。

                          2008年01月31日 09:55 更新




 すべての事の発端は、2004年6月に福岡県篠栗町にある「エイルヴィラツインコートシティ門松駅前イーストサイド」の管理組合が、「設計や施工にミスがあり、構造上の安全性が確保されていない」として、販売元の作州商事(福岡市)、施工主の香椎建設(同)、設計者のニューアート建築設計事務所(同)を福岡地裁に提訴したことである。建替費用や代替住居確保費用など、総額約10億8,000万円の支払いを求めた。

 そのような折、05年11月に姉歯事件が起こった。その直後、同じマンションの別棟「ウエストサイド」の管理組合が、構造計算のミスを理由に、先の三者に加えて、構造計算を担当していた仲盛氏に対して建替費用など約9億2,800万円の損害賠償請求訴訟を起こした。

 ひとつ指摘しておきたいのが、「イーストサイド」裁判については構造計算そのものがメインの問題ではなかったが、姉歯事件後の「ウエストサイド」裁判では、突然、構造計算がクローズアップされたことである。

 さらに、構造計算書偽装問題の一連の調査として、国交省は姉歯被告と関わりがあった木村建設の施工物件の構造再計算を行なうよう、各自治体に通達。これを受けて、福岡市も調査に乗り出した。

 06年2月3日、仲盛氏が以前経営していたサムシングが構造計算を行なった賃貸共同住宅4件中3件について、再計算を依頼されていた(社)日本建築構造技術者協会(JSCA)から市に対して、偽装があったと考えられると伝えられた。

 これを受けて06年2月7日、仲盛氏は福岡市に呼ばれて事情聴取をされた。その際、福岡市側から「お互いの見解をすり合わせてから発表します」という約束をされていた。

 しかし翌8日、何の前触れもなく突如「仲盛の構造設計に問題がある」と福岡市が公表した。「あの日は誕生日だったこともあり、一生忘れられない日になった。今考えれば、あれは国交省の指示だったのだろう。木村建設の物件は、我々が直接受注して手掛けたものではなかったが、無理やり姉歯問題とリンクさせられた」と氏は述懐する。

 さらに、「問題が起こってしまった以上、設計が悪いか施工が悪いかという話になるが、私の構造計算は間違っていないという自信がある。やはり施工に問題があったとしか考えられない」と主張する。

 こうして、仲盛氏は福岡市への提訴を決意し、誕生日という運命的な日が、仲盛氏の孤独な「戦い」の日々の始まりとなったのである。

                          2008年02月01日 10:19 更新




 事件から2カ月後の06年4月、仲盛氏は弊社インタビューに対して「非常に不快だ。姉歯氏とはしていることが違う」、「構造計算がここまでスポットを浴びるとは誰も思っていなかった」、「反論を2回したが、何回やっても議論がかみ合わない」と、不満をにじませていた。

 あれから2年。話を聞く限り、状況が改善しているようには思えない。「昨年10月ごろ、反論の場を与えられるというのでその場に行ったが、担当者が誰もいなかった。2年間も、当事者の意見を直接聞こうとしないのはおかしい」と、その怒りは収まらない。

以前に県議会でも、一連の事件について追究してもらったそうだが、指定構造計算適合性判定機関(以下:適判)から理論攻めにされたら引き下がるしかない、という状況だそうだ。

 仲盛氏は、何度か反論の場に出席させてほしいと訴えたが、「国交省の命令で、来てはダメと言われていた」そうだ。2年前の2月7日に公開討論を申し込んだ際も、出席メンバーすら教えられなかった。「当時私が話し合いに参加できていれば、今のように裁判が長引くような状況にはならかっただろう」と、行政の対応のまずさを指摘した。

「もし公開討論が実現するなら、大学教授でも専門家でも誰でも良いから、なるべく多くの人に参加してほしい。そして、ぜひ住民の皆さんにも参加していただきたい。討論でも裁判でも、私は絶対に負けない自信がある。法や論理といった知識では勝てないかもしれないが、30年間で15,000件を手掛けて身に付けた経験と知恵があるから」と、氏は自分の意見を公開する場が必要だと訴える。

「業務上のミスがあれば、素直に謝るつもりだ。私はこの問題が出たとき、他に波及しないように全部自分のところでせき止めていた。ある意味、行政のミスをカバーしていた面もある。それなのに、行政に嫌われる筋合いはない。行政には現場を見てほしい」と氏は語る。

                          2008年02月04日 10:42 更新




 先日、弊社のもとに、仲盛氏から1通のファックスが届いた。それにはこう記されていた。「『構造設計者:協同組合建築構造調査機構 仲盛昭二』が構造設計を行なった物件が、福岡市に建築確認を申請されました。この物件が、平成19年12月14日に福岡市より建築確認を頂きました」。

 全国的に建築確認件数が減っているなか、しかも行政と戦い続けている氏にとって、このたった一件の確認申請はどれだけ重いものだっただろうか。

 氏は、「国交省のやり方は、物件を無作為に抽出し、たまたま書類上ミスがあった物件を取り上げて、構造上問題がありとしてしまうものだ。早くすべてを終わらせて、住民の方々に安心してもらい、自分もゆっくりしたい」と、住民第一であるという想いを語る。

 しかし、「福岡県や市が国交省の言いなりになってしまっており、なかなか決着がつかない。もはや個人的バッシングに近いものがある。これは人権問題と言っても、過言ではない。12月14日の建築確認の件にしても、県から市に『確認を下ろすな』という要請があったようだ。しかし市は、『法的に問題がない』という理由で、ようやく確認を下ろしたようだ」と、行政の構造的問題に対して怒りをあらわにしていた。

 仲盛氏は、07年6月20日に施行された改正建築基準法についても言及した。「法の内容で変更があったのは、たった2点のみ。そのほかは何も変わっていない。指定確認検査機関と適判のダブルチェックになったが、ことごとく確認が下りないという事態が起こっている」と言う事だ。

 しかもこれは、「適判の主観によって決まるというから驚きだ。事前審査は何のためにあるのか。日本ERIの関係者も、適判を訴えてほしいと言っているぐらいだ。しかし、彼らは立場上、表立ってそのようなことは言えない」と、検査機関内部にも問題が内包されていると指摘した。

 さらに、「業者が役所に直接文句を言うと、銀行融資が止まってしまう恐れがあるため、なかなかそういう声が上がらない。現場では、水面下で生々しい対応が繰り広げられている」と、建設業界の構造的問題についても言及した。

                          2008年02月05日 10:23 更新




 改正建築基準法の悪影響については、すでに各所で言及があるように、行政があまりにも現場を知らなさ過ぎることが最大の要因である。構造計算書問題で渦中の人物であった仲盛氏の声が届かないのも、こうした行政の一連の対応を見ている限り、至極当然である。

 「大体、これまでの基準で行けば、確認が下りないはずがない。今の状況を見ると、これまでの物件はほとんどが不適格ということになる。福岡でも、このツケはエンドユーザーにいく。法改正には明確な基準が無い。福岡市は記者会見で公表すべきだと思う。この国は異常だ。もう一度、誰かが提訴しないと収拾がつかないくらいの事態となっているのではないか」。

 こう感じているのは、何も氏1人だけではないだろう。建設とそれに関わる周辺の業界の悲鳴は、すでにあらゆるところで出ている。

 また、「第2の姉歯」と揶揄された氏は、自身が苦境に立たされているにも関わらず、業界の将来を心配していた。「私が知っているだけでも、すでに6人が廃業した。60%〜70%の職人が、来年には廃業したいと言っている。とくに、技術と知恵が熟練した50代が次々にやめていくのは、業界にとって非常に痛手だ。収入が減り、意欲をそぎ落とされ、皆が仕事に魅力を感じられなくなっている証拠だ。建設の需要はまだまだあるのに、もったいない話だ。また今年からは、本格的に建設関連業界は大不況・大混乱に陥るだろう」と危惧していた。

 氏は現在、和解に向けて突き進んでいる。福岡市に対して、風評被害を受けたとして裁判を起こし、07年9月に棄却され、控訴の構えを見せていたが、「10月に控訴を取り下げた。しかし、疑念は払拭したつもりだ。裁判は今年で終わらせる。和解して、住民を早く楽にしてあげたい。そういう意味で、今年は勝負の年だ」と意欲を燃やす。

 片道切符のつもりで真剣勝負をするという仲盛氏。「自分は間違っていない」という絶対の自信があったからこそ、2年間も孤独に戦い抜けたのだろう。今年、この戦いに終止符は打てるのだろうか。

                          2008年02月06日 10:19 更新



 これまで、氏は「孤軍奮闘」「孤独な戦い」をしてきた、と記してきたが、それは実は意図的な面もあったようだ。

 そもそも、今回の裁判で問題となっていたのは「サムシングの構造設計」である。それならば、仲盛氏自身ではなく、元サムシング従業員がミスをしていた可能性も否定はできない。

 それについて氏に問うと、
「たしかにサムシングは分業をしており、私が直接構造計算に関われた時間はそれほどなかったが、最終チェックはすべて自分の目で行なっていた。やはり構造計算自体にミスがあったとは思えない。それに私は当時の社長だ。責任転嫁を他の人にするつもりはないし、そもそも社長はすべてを負うリスクがある」
 と、経営者としてのあるべき姿を説く。

 では逆に、元サムシングOBと協力して戦っていくという選択肢はなかったのだろうか。それについて氏は、
「もしOBが参加したら、意見が混乱し、責任のなすりつけ合いになる恐れがある。それよりもむしろ、私が元経営者として、自身の考えが社の一貫した意見だと訴え続ける必要がある」
 と述べる。

さらに、
「たしかに普通ならOBと打ち合わせをして一致団結、という方策を採るだろうが、あえて自分から関係を切っている。もちろん、OBからの協力要請もあった。しかし、それは気持ちだけ受け取っておきたい」
 と、あえて自ら元従業員に火の粉がふりかからないように、孤独という道を選んだのだと言う。

 氏がこのような方策を採ったのには、以上の理由があるのだが、実際にOBに火の粉がふりかかっている場面に遭遇したらしい。
「あるOBが独立して設計事務所を始めたものの、あの事件(姉歯事件後の「エイルヴィラウエストサイド」裁判)のあと、元サムシング社員だというだけで、いろいろな銀行から実際に融資を断られている。金融機関の間で、そうした個人情報が出回っているようだ」

 こうした現状もあって、氏はあえて孤独の道を選んだ。しかし、そこには多くの人の協力があったのも間違いない。
「私は家族をはじめ、いろいろな人に助けられたからこそ、今でも戦うことができている」
2008年02月07日 11:03 更新


 これまで、仲盛氏の波乱万丈な半生を記してきたが、家族のことが気になり話を聞くと、「妻には、『一切テレビは見ないから大丈夫よ。あなたの考えていることは表情を見て分かるわ』と言われた。また、息子に『学校で何か言われてないか』と聞いたら、『お父さんが正直に話してくれているから大丈夫』と言われた。私は、家族に対して、真実をすべて正直に話していたから、家族にも支えられた」。

 また、「去年9月に判決が言い渡された、福岡市に対する300万円の損害賠償請求訴訟(※)でも、結果的には原告の請求棄却で敗訴だったが、ある恩人に紹介された弁護士の先生が、『仲盛さん、これは良い判決事例になるよ』と言われ、控訴取り下げを決意した」と、ある弁護士との出会いが、もうひとつの「戦い」に終止符を打つ決意をさせたと語る。 

(※)サムシングが構造計算を行なった建築物が、福岡市が強度不足だと公表したことで、風評被害で多大な損害を被ったという事由による訴訟。裁判所は、「公表の数カ月後に安全宣言が行なわれたことを考慮すれば、福岡市側も安全性を確かめてから公表する余地があった」と認めた。
 氏は、「戦い」を通じて得たもの、そして「戦い」が生み出したものについて、次のように語った。

 「まず、絶対に逃げたらダメだと感じた。逃げなかったからこそ、家族は支えてくれたし、良い人にもめぐり会えた。今は敵半分、味方半分だが、味方が半分もいてくれれば戦い抜くには十分だ。
 この問題は、私が技術屋だからこそ対処できた。構造計算は70%が経験、30%が知識の経験工学だ。行政はどうしても実務不足だから、知識はあるが知恵や経験値がない。今回の裁判を通じて、行政側の構造計算技術が向上したのは歓迎すべきことだと思う。
 ただ、行政の窓口の人もかわいそうだ。人のアラ探しの仕事になり、どうしても優秀な人が集まりにくい。また、より問題なのは適判制度だ。私は制度そのものには賛成だが、昨年6月20日以降は、とくに適判員が主観で確認を下ろさないというケースが目立って増えてきた。これは皆で声を上げなければ、解決しないだろう。
 これまで構造設計士は個人営業が多かったが、最近では構造設計士の絶対数が減っている。これは大きな損失だ。また、確認申請が厳しくなったせいで、たとえばゼネコン側が施工段階で起きた問題を隠蔽する体質になりつつあるというような話も聞いている。なぜなら、問題があれば工事を長期間中断して再確認する必要があるからだ」。
 
 こうした建設業界の構造的問題は、行政・民間の双方がこれから考えていくべき喫緊の課題であろう。以上の仲盛氏の言をもって、「建設業界への提言」の締めくくりとしたい。
氏の半生を語り尽くすことはできていないかもしれないが、「私は命に代えてでも、最後まで一級建築士としての誇りを持って『戦い』抜き、和解を勝ち取って住民の方々を安心させたい」という想いは伝えられたかと思う。

 最後に氏は、これから構造計算に関わろうとする若い世代に対して、次のように述べた。

 「今の若い人たちに言いたいのは、構造の全体を把握して欲しいということ。最近は細かい数字にこだわりすぎて、大局を見ることができない人が増えている。ただ細かい数字ばかりを追うのではなく、構造がどのように成り立っているのか、知識はもちろん、もっと知恵や経験を身に付けて、総合的な構造計算ができるようになってもらいたい」。

おわり
2008年02月08日 11:32 更新
posted by ら・まんた at 13:30| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする